こんにちは。ブログ「家庭の経営」を運営しているあくあ(3級FP技能士)です。
私は今年56歳。定年まで残り4年になりました。
そろそろ退職金のことを真剣に考えようと思い、勤務先の規程を引っ張り出したのですが、そこで手が止まりました。退職金とiDeCo、この2つをいつ受け取るかで、税金がまったく変わるらしいのです。
しかも2026年1月から、ルールの一部が改正されています。
そこで、わが家の実際の数字を使って、ひとつずつ計算してみることにしました。電卓を叩いた結果は、正直おどろくものでした。
⚠️ 本記事について(免責事項)
本記事は、著者個人の状況をもとにした試算と考え方をまとめたものであり、特定の選択や金融商品を推奨するものではありません。税制は改正されることがあり、退職金の支給ルールは会社ごとに異なります。具体的な判断は、ご自身の勤務先の規程と最新の制度を必ずご確認のうえ、税理士・独立系FPなどの専門家にご相談ください。金額はすべて概算です。
わが家の前提条件
計算の前に、数字を並べておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年齢 | 56歳(定年まで4年) |
| 会社勤続 | 58歳時点で32年、60歳まで働けば34年 |
| 退職金 | 約900万円(58歳時点までの計算) |
| 受け取り時期 | 60歳の定年退職時 |
| iDeCo | 加入14年、約600万円 |
| 58〜60歳 | 嘱託社員として勤務 |
私の会社は、58歳で正社員としての登用が終わり、そこから60歳の定年まで2年間は嘱託社員になります。退職金の計算は58歳時点まで、受け取りは60歳という制度です。
似たような制度の会社にお勤めの方は、ご自身の数字に置き換えて読んでみてください。
疑問①|控除枠が余ったら、iDeCoに使えるのか
最初に浮かんだのが、この疑問でした。
勤続32年なら退職所得控除は 800万円+70万円×12年=1,640万円。でも退職金は900万円です。740万円も枠が余る計算になります。
「この余りを、iDeCoの600万円に回せるんちゃうか?」
調べた結論は、使えませんでした。
退職所得控除は、銀行口座の残高のような「枠」ではありません。受け取るたびに、勤続期間や加入期間から計算し直すものです。使い残しを繰り越す仕組みは存在しません。
ここは私も完全に勘違いしていました。最初に押さえるべき大前提だと思います。
疑問②|iDeCoは58歳で受け取れるのか
次に考えたのが、「いっそ58歳で両方まとめて受け取ってしまえば?」という案でした。
これもできません。
iDeCoの老齢給付金は原則60歳以降に請求でき、受給開始時期は75歳になるまでの間で選べます。ただし60歳から受け取るには、60歳になるまでの通算加入者等期間が10年以上必要です。10年に満たない場合は、受給開始できる年齢が61歳〜65歳へ繰り下がります。
私は加入14年なので、60歳ちょうどで受給権が発生します。最短が60歳。ここは自分の意思では動かせません。
つまり、タイミングを調整できるのは退職金の側だけということになります。
疑問③|受け取る年がずれると、どうなるのか
では、仮に58歳で退職金を受け取り、60歳でiDeCoを受け取ったら?
ここで登場するのが「19年ルール」です。
退職金を先に受け取ってからiDeCoを受け取る場合、iDeCoを受け取る年の前年以前19年内に退職金があると、勤続期間と加入期間の重複部分に対応する退職所得控除が差し引かれます。
2026年の改正と混同しないように
ここで注意したいのが、2026年1月から「5年ルールが10年ルールに延長された」という改正です。
あれは「iDeCoが先、退職金が後」の場合の話です。令和7年度税制改正により、2026年1月1日以後に受け取る退職金から、重複排除の判定期間が「前年以前4年内」から「前年以前9年内」に延長されました。
一方、「退職金が先、iDeCoが後」の19年ルールは据え置きです。ニュースを見て「うちも関係あるのか」と焦る前に、自分がどちらの順番になるのかを確認するのが先です。
わが家の数字で計算すると
計算の順番はこうなります。
- 先に受け取る退職金900万円から「みなし勤続年数」を出す → 20年+(900万円−800万円)÷70万円 = 21年
- iDeCo加入14年分の控除 → 40万円×14年 = 560万円
- 重複期間(46〜58歳の12年)分 → 40万円×12年 = 480万円
- 調整後の控除 → 560万円−480万円 = 80万円
課税対象は(600万円−80万円)×1/2 = 260万円。所得税と住民税で、およそ42万円の負担になります。
19年空ければ調整を避けられますが、iDeCoは75歳までに受給を始める必要があります。58歳退職からでは77歳以降になってしまい、物理的に不可能です。この順番を選ぶなら、重複排除は受け入れる前提になります。
拍子抜け|わが家の制度が、いちばん有利だった
ここまで調べて、ふと気づきました。
私の会社は、退職金の支給が60歳の定年退職時。つまり、iDeCoの受給権が発生する年と、もともと揃っているのです。
同じ年に受け取る一時金は、合算して1つの退職所得として計算します。このとき控除は、勤続期間と加入期間の重複を除いた年数で出します。
- 勤続期間:26歳〜60歳の34年(iDeCo加入14年はこの中に含まれる)
- 控除額:800万円+70万円×14年 = 1,780万円
- 一時金の合計:900万円+600万円 = 1,500万円
1,500万円 < 1,780万円。控除の範囲に収まるので、所得税・住民税ともにゼロです。
何も工夫しなくても、いちばん有利な形になっていました。
一般に「同じ年に受け取ると合算されて不利」と言われることが多いのですが、それは合計額が控除を超える場合の話です。控除の枠に収まるなら、むしろ合算したほうが有利になります。
確認しておきたい2つのこと
結論は出ましたが、退職前に確認するつもりのことが2つあります。
① 嘱託の2年は、勤続年数に入るのか
退職金の「額」を58歳までで計算するのは、あくまで会社の支給ルールの話です。一方、退職所得控除の勤続年数は、その会社で引き続き勤務した期間で数えるのが原則です。
ただし最終的には、会社が発行する源泉徴収票の「勤続期間」欄がどうなっているかで決まります。
32年なら控除1,640万円、34年なら1,780万円。140万円の差です。今回は仮に32年でも1,500万円は枠内なので税額ゼロですが、金額が大きい方にとっては無視できない差になります。
② 申告書に「先に受け取った分」を書く
もうひとつは実務的な話です。
同じ年に2か所から退職一時金を受け取る場合、後から受け取るほうの「退職所得の受給に関する申告書」に、先に受け取った分を記載する必要があります。
ここを書き漏らすと合算計算がされず、あとで修正することになります。
なお、この申告書そのものを提出しないと、退職金の額に一律20.42%の源泉徴収がかかり、確定申告での精算が必要になります。会社任せにせず、出したかどうかは自分でも確認しておきたいところです。
まとめ:順番とタイミングで、数十万円が動く
最後に、この記事の要点を振り返ります。
- 退職所得控除の使い残しは繰り越せない
- iDeCoは原則60歳から。58歳での受け取りはできない
- 退職金が先→iDeCoが後なら19年ルールで控除が削られる
- 2026年の10年ルール改正は「iDeCoが先」の場合の話。混同しない
- 同じ年に受け取れば合算され、控除の枠に収まるなら税額ゼロ
- 嘱託期間が勤続年数に入るかは、源泉徴収票の勤続期間欄で確認する
わが家の場合、ずらせば約42万円、揃えればゼロ。受け取る順番とタイミングだけで、数十万円が動くという事実に、あらためておどろきました。
そしていつもお伝えしていることですが、ここに書いたのは、わが家の制度と数字での一例にすぎません。退職金の支給時期、iDeCoの加入期間、勤続年数。ひとつ違えば答えは変わります。
まずは勤務先の退職金規程を読むこと。ここから始めてみてください。
なお、税金の答えは出たのですが、実はもうひとつ大きな悩みが残っています。**「給与が半分になる嘱託の2年間、働くべきなのか」**という問題です。こちらは次回の記事で、あらためて書きたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
⚠️ 改めて:本記事の免責について
本記事は著者個人の状況にもとづく試算であり、特定の選択肢の有利さや金額を保証するものではありません。税制は改正される可能性があります。退職金・年金・税務に関する具体的な判断は、勤務先の規程と最新の制度を必ず確認のうえ、税理士・独立系FPなどの専門家にご相談ください。
著者:あくあ
3級FP技能士/28年勤続のサラリーマン/妻と3人の子供・母との同居中
ブログ「家庭の経営」では、わが家の暮らしや家計管理の試行錯誤を、ゆるく綴っています。


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